成長するブルーパブマーケティングと経営の方向をどう決める。

時は若干さかのぼるが、9月17日付けロサンジェルス・タイムズのビジネスセクションに、ブルーパブ・レストランへのプロのコンサルティングによるマーケティング・クリニックが掲載された。スモールビジネスというテーマで、成長している企業へのアドバイスがおこなわれるセクションで、そこに、以前私が取材したことがあるウエストウッド・ブルーイング・カンパニーがモデルとして登場。 資金が少ないシングル・レストランが、お金をかけずにもう一歩前進するためへのプロフェッショナルのアドバイスは、日本のブルーパブレストランのマーケティングにおいても、なんらかの参考になるのではないかと思う。


1996年にウエストウッド・ブルーイング・カンパニーがオープンしたときに、誰もがその成功を確信した。ビジネス・メインストリートのウイルシャー通りとショップが並ぶウエストウッド通りの角、すぐ裏手にUCLA、さらにベルエアなどの高級住宅地ににも近いロケーションは、学生のみならず、もう少し年配のアップスケールの顧客を魅惑するに十分である。 しかしながら、このブルーパブは最初のデザイナー・ビールをケグ詰めして2年とたたないうちに、すでにコースを変更した。このレストランに100万ドルを投資した30人のオーナーたちは、中年・高年層の顧客がメイン客になるはずの学生群に、おそれをなして寄り付かなくなってきていることに気がついたのである。 そこで、学生に人気のピッチャービールはジョッキに変わり、入り口での身分証明チェックはより厳しくなった。(カリフォルニアでは21歳未満は飲酒が禁じられており、それをさせたことがわかると、その店は営業停止になるなど厳しい処分が課せられる。)

7月末、このレストランは中年層のアップスケールの顧客にアピールするため、そのパブスタイルの食事に加え、もっと洗練されたランチとディナーのメニューを、価格では、クレオール・シャーク($9.99)からメカジキ($13.59)、ポークチョップ・ロイン($10.99)の範囲で増加することにした。 このプランを導入してから2週間後、経営陣はオーナーたちに、もっとほかの部分を強化するよう指示された。他の部分というのは、たとえば、週末のブランチであるとか、ウィークデーのハッピーアワーであるとか、これまで利益を出していなかった部分である。 しかし、パシフィック・パルセーデスを本拠にするレストラン業界コンサルタント、レイモンド・コーエン氏はここで、「ブルーパブというのは、その強みであるランチ、ディナーという部分でプレーし続けることにより、そのかぎられた広告・マーケティング予算をよりうまく利用できるはずだ。」と提案。「特にキャッシュに限りがあるときには、自分の弱い部分を最初に見るのは間違いだ。自分の一番強いところからスタートすべきである。」

ある水曜日の夜、レストランはちょうどよいくらいに混み合っていた。騒ぎを求める学生だけではなく、コーナーでは近所のオフィスからの8人の男女が食事をし、ビールを飲んでいた。いくつかのファミリーやカップルも食事をしている。またバーカウンターの部分では、身なりのきちんとした社会人と近所に住んでいる人たちでいっぱいであった。「これが我々が狙っているグループなんです。社会人と近所の住人。 実際ほとんどの顧客はUCLAからの学生ではありません。」とウエストウッドの副社長。 ほとんどの零細企業と同じで、ウエストウッド・ブルーイングも多くのやるべき仕事のリストを抱えている。 しかし、問題なのはそれを成し遂げるお金がないことである。投資家からの資金は、醸造機器に$250,000、レストランの改築に$100,000、その他セールス用品に$30,000をカバーしている。ここでこのレストランの毎月の家賃が$20,000もあることを発見したコーエンは、この副社長とパートナーへの挑戦は、いかにアップスケールしたディナーを食べ、ビールを飲んでくれる顧客で席を埋めるかということであると指摘。この家賃をカバーする利益を、休暇中にキャンパスの人口が極端に減る大学生に頼ることは難しいからである。

このレストランのオーナーたちは、広告とマーケティングに本当にかぎられた予算しかないのがわかっているため、"汗の宣伝"という方法に頼っている。何人かの投資家やレストランの経営陣は、近隣の会社や住民に口コミを広げようと努力しているし、チャリティ・イベントなどのスポンサーをしたり、地域の無利益団体などとタイアップしたセールス・プログラムを使用したりして、商売を活発にしようとしている。 また最近では、ハリウッドのプロダクション会社とか、近隣のホテルなどにもセールスをかけている。さらに、このレストランは広大な夢も持っている。 この地域に限らず、大ロサンジェルスにまたがって、"ローリーズ"とか"グラッドストーンズ"とかのように、その名を轟かせたいというものだ。 しかし、この独立したレストランが常にこの問題、すなわち"資金不足"に取り付かれていることを副社長はよくわかっている。「我々は、これを伝統的な広告費をかけることなく、やろうとしているのです。」と、バックから聞こえてくるのは「Mission Impossible」(スパイ大作戦)のテーマソングか????

できないこともないよ、と、17年間レストラン業界のコンサルタントとして、とうちゃんかあちゃん食堂から、40億の利益を上げるコーポレーションまで面倒を見てきたベテランが言うには、ウエストウッドのような小さな企業にも、利益の出るニッチマーケットがあるはずで、それを見出し、守ることさえができれば、そこから発展が望めるはずだとのこと。 そうするためにやらなければならないこと。それは、何が自分のベストなのかを見出し、それを人々の口に上らせることである。とコーエン。もしビールが良いのであれば、ビールに集中すべき。 たとえそのために、レストラン部分のウエイトを削ることがあっても。 さらに、レストランの従業員でマーケティングに関わっているものは、必ず毎週集まって、"ブレインストーム"をおこすようにと提案する。ウエストウッドでは、毎週"経営"ミーティングを開いていることを言うと、「これはマーケティングのみのミーティングであるべき」と強く主張。 「顧客の口に自分たちのことを上らせることは、それくらい真剣にやらなければならないことなのだ。」 そしてそのためには、"何をその顧客の口に上らせるか"を、はっきりフレーム建てしなければならないのである。 ここでコーエンは、この4ページにわたるメニューの刈り込みをする必要もあるとアドバイスする。 「今は、いったいこのレストランの芯が何なのかわからない。このメニューからはぐちゃぐちゃのメッセージしか受け取れない。 たった今"ローリーズ"のような有名レストランになりたいといったが、ローリーズにいくつのメニューがある? たった2つしかない。そしてその中の一つはプライム・リブを食べたくない人のためのシーフードだ。」

ここでのコーエンの解決法は、まずメニューの最も自信のあるもの6つかそこらを、ボックスで囲む、ということ。 こうすることにより、ここでは、21歳から50歳くらいまでの、自由に金を使える年齢層が'自然'に集まってくるのを促す。さらに、古臭いイメージを持つビーフのメニューを減らし、夜はブルーパブを、ディナーとドリンカー(21歳以上)のための場所と言う雰囲気にキープする、というものである。 では、人の少ない土日のブランチやハッピーアワーというアイディアはどうだろうか? コーエンによれば、ランチとディナーに焦点を絞り続け、顧客に満足を与えていれば、その顧客が"ただ"で、レストランの大使となって口コミを広げてくれるはずという。 もちろん、そうするためには、この大使たちが話す内容を与える必要がある。そこで、コーエンはレストラン経営陣に、メニューの変化があったら、それを高らかにアナウンスするよう薦めた。たとえば、魚のメニューが加わったら、そこに大文字の太い字で「フレッシュ」と書くとか、また、そのメニューを店内販促するとかである。 たとえば、20ドルのビーフ料理を新たに加えたときに、ある時間帯のみ"12ドル"で食べられるセールとかである。「こうすれば、顧客に"今しかない"と考えさせる。こうしていってみれば、マーケティングとはすなわち、顧客の脳の裏に訴えるというよりは、表に訴えることだといえるだろう。」 さらに、このブルーパブの2階にある大きなミーティング・ルームをケータリング・イベントに使用することも提案する。コーエンはオーナーたちに、この先のホリデーシーズン(10月末のハロウィーンから1月のニューイヤーまで)に向かってケータリングサービスを開始するよう薦めた。 また、階上のウィンドーも、ネオンとかサインで看板広告するよう薦めた。 このエリアは路上や一階の広告看板に対してうるさいので、こういうスタイルでの広告が絶対必要と指摘。


このミーティングが終わった後、コーエンは、多くの小さなレストランが、ウエストウッドの持っている問題点と可能性からたくさんのことを学べると付け加えた。「ビジネスを大きくしようとしているときに、人々がその弱点をアタックするのはよくある話だ。しかし、そのビジネスの強みというのは、彼らが持っている今の顧客のボデイなのである。統計で、会社員が月に20回以上昼食を外で食べる、というデータが出ているのであるなら、そこにランチのリピート客が来るチャンスはとても大きいはずである。そして、その顧客がそのレストランのファンになれば、彼らは喜んで口コミを広げてくれる。」 さらにこう続けた。「これは広告費をたんとかけて、こういう人たちを集めるよりは、よっぽどコスト・エフェクティブな方法だ。特に一生膨大なキャンペーン基金を持つ可能性のない、シングルレストランにとってはね。」


企業データとメークオーバー
企業名:Westwood Brewing Co.
本社: ウエストウッド カリフォルニア
ビジネスのタイプ:ブルーパブ・レストラン
ステータス:個人企業
金融:個人投資で約100万ドル
オーナー: 30人の投資家
従業員:60人
開店日:1996年6月
顧客:UCLAの学生、近辺の会社員、近所の住人、ハリウッド映画スタジオのプレミア・パーティなども行う。
メインの問題点: 名前を広げること。
ゴール:オフピーク時の商売を活発にすること、第二店を出店すること。
推薦解決方法:レストランの中心ビジネスであるランチとディナーを強固することに集中すること。
月ごとの損益状況を把握し、何が利益の中心になっているかをつかむこと。
レストランから1キロ以上離れたところに住んでいる"ポテンシャル"な顧客を狙う前に、ごく近隣へのマーケティングや広告に集中すること。
時間限定のディスカウント、たとえば20ドルのものをある時間中のみ12ドルで出すとかいうような広告をすることにより、顧客にメニューが変わったことを確実に知らせるようにする。
同額の2品目をオーダーするとそれは無料とかいうような、クーポンはやめる。 これは、長期で見ると結局は経費が多くかかり、ポテンシャルな客にブルーパブがどんなものを出すところかというところで、間違ったイメージを与える危険性が大きい。
メニューで一番お勧めの部分をしっかり囲み、目に付くようにする。現在のメニューは品数が豊富だが、どれがシェフのお勧めなのかが全くわからない。
マーケティングや広告宣伝費を、現在うまくいっていない部分に当てる計画はしばらく棚上げにして、現在もっとも強い部分にもっともマンパワーを加えるようにする。ここでは、ランチとディナー。
カラフルなサインを2階につけて、通りすがりの人にも、ここがどんな処なのか知らせるようにする。
ケータリングの可能性を探り、今あまり役立っていない2階を活用することに専念する。


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