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たった一瞬の贅沢というものがある。たとえば夏の夜空を飾る花火である。
子供の頃、多摩川の花火をしばしば見に行った。家から歩いて三十分、会場にあたる河原の堤は鈴なりの人々で一杯で、低いところで上げられる仕掛け花火は人々の背中がさえぎってほとんど見られない。ドーンと威勢の良い音と共に空高く打ち上げられる花火に歓声をあげたものだ。パラパラと音を立てて消え去る束の間の「夜空に描かれた大きな絵」にため息が出た。
わずか一時間も経つか経たぬうちにまたたくまに花火は終了。再び暗い夜道を姉達ととぼとぼと家路についたものだ。生ぬるい夏の夜風の中に余韻があった。「さあ、八月。夏休みはまだ一月もある。」開放された喜びと期待に心がはずんだ。一瞬のうちに消え去った花火は子供ごころに「はかなさ」とか、一年をその一瞬にかけて生きる人々の存在を教えてくれたように思う。
そういえばこの夏もブリュッセルのグランプラス広場で、「花のカーペット」が繰り広げられる。伝統ある石畳の広場は数えきれないほど沢山の花で「絨毯模様」に彩られる。短い花の命がある限り、一年のうちわずか数日間だけの石畳に描かれた「大地の絵」の展覧会だ。二年に一度の「花のカーペット」、今年は八月十五日から十八日まで。
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