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お札は文化だと思うことがある。一枚の紙幣にひとつの国の歴史や文化が表われる。
ベルギーのお札を見ていると楽しくなる。黄色の二百フラン札の裏側は裏側は管楽器を演奏する人々が描かれ、右の部分にはミューズ川ぞいにそびえ立つディナンの城砦の絵が刷られている。表はと見るとアドルフ・サックスの肖像と管楽器の絵だ。
一方、八千円に相当する二千フラン札にはアール・ヌーヴォーの巨匠、建築家ヴィクトル・オルタの肖像と、曲線の美しいアール・ヌーヴォーのデザインと、彼のデザインによる小さな椅子が象徴的に描かれている。裏面には淡い紫色のクレマチスの花と緑の葉がつるがからむように曲線を描く。アール・ヌーヴォーが植物にデザインのイメージを求めたことを表している。
ディナンに生まれ、楽器サキソフォンを発明したサックス没後百年余り。一昨年、故郷の街で盛大に百年祭が祝われた。一方、アール・ヌーヴォー様式が十九世紀後半ブリュッセルを中心に生まれて百年。オルタはその芸術様式の指導的役割をになった。
円高の威力もすでに失せた。が、福沢諭吉の一万円札、夏目漱石の千円札、それぞれの裏面には鶴やキジのつがいが克明に刷られている。描かれた絵はまぎれもなくこの国の歴史、文化や風土でもある。刷られた数字だけでなく描かれた絵も大切にしたいものだ。
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