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暖かな十月のある日、ブリュッセルの王立美術館を訪ねた。
グランプラス広場から「芸術の丘」とよばれるなだらかな坂を登りつめるとロワイヤル広場になる。美術館はその一角にある。ブリューゲルやルーベンスの絵画がある古典美術館とマグリットやデルヴォーなどのシュールレアリズムの絵画を展示する近代美術館の二つの美術館が地下の通路によって結ばれている。
開館前の入口にはすでに大勢の小学生が教師に引率されて嬉々として扉が開かれるのを待っていた。ひとしきり巡回して、マグリットの「光の帝国」を見ようと近代美術館の地下六階に下りると、ほの暗い部屋の床に車座になって男性ガイドの説明を熱心に聞きながら絵に見入っている小学生の一団がいた。日本では見掛けない光景だ。思わずカメラを取り出した。
その様子を見咎めるように男が私の方を振り向き、手を上げた。男の姿がシルエットになり、マグリットの青い空と雲の絵の中に浮かび上がった。まるで一点のシュールレアリズムの絵を見る思いがした。魅せられたようにシャッターを押した。「おい、おい、私はオブジェではないぞ。」さえぎるように男が言った。言うことが心憎い。「パルドン」と言葉を残してそそくさと私はその場を立ち去った。
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