バード・サンクチュアリ
by 宮下南緒子

若葉の緑が目にまぶしい5月。1度一年前、北海の高級リゾート地、クノックの野鳥保護公園ズウィンを訪ねた。ブルージュから汽車で15分、クノック駅からタクシーで向かった。イタリアなまりの女性のタクシー運転手は公園の場所が分からず、遠回りをしてやっと入口にたどりついた。

 いらいらした気持ちを静めるように海辺に向かって歩きだした。と、四方八方から鳥の声がする。草むらから鴨が子鴨を従えて姿を見せた。木立を見上げると、木のてっぺんにこんもりと丸いこうのとりの巣がいくつもある。「ほら、あの木の上を見て」と案内人が双眼鏡を差し出した。「どこどこ」双眼鏡をのぞき慣れていない私は焦点が定まらず、やっと木の葉のかげに大きく口を開けた雛鳥に親鳥が今しも餌を与えようとしている姿をとらえることが出来た。5月といえば鳥たちの子育ての季節だ。

 堤防の上に立った。北海に続く150ヘクタールに及ぶ広大な干潟に無数のゆりかもめが群がる。はるか右手はオランダだ。「立ち入り禁止」と書かれた立て札はこの干潟に暮らす生き物たちを厳かに守るようだ。野鳥だけではない。海水を含んだ砂丘や海辺の牧草地には野ウサギや羊が暮らす。

 この国で唯一の私有のバード・サンクチュアリとなっているズウィンの今あるは、私財を投じて堤防を築き、干潟を自然の姿にと守りぬいてきた、かつてこの町の市長を永年つとめたリッペンス男爵ぬきには語れない。

 


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