「一寸法師」について
日本には小さな生きものに不思議な力がひそんでいると考える「小さい子」信仰があり、「一寸法師」は、こうした信仰を背景にした昔話と考えられています。
室町時代の「お伽草子」に取りあげられたため有名になり、小さい姿でこの世に現れる者を主人公とする昔話の代表名のようになったということです。同型の「小さい子」話は、全国各地に伝えられており、いろいろな名前で呼ばれているそうです。山形県や岡山県などでは五分次郎(ごぶじろう)、新潟県や岐阜県などでは指太郎、このほか親指太郎、豆助、豆一、豆太郎、豆蔵、ちび太郎などとも呼ばれているということです。
また、たにし(たにし長者)や、かたつむり、なめくじ、蛙、蛇(蛇息子)などのような、動物のかたちをとるものもあり、長者の娘の口のまわりに香煎(こうせん)をぬって嫁にするなどという語りが多く行われているそうです。
「一寸法師」のような話は、日本だけでなく、中国や韓国などアジアをはじめ、広くヨーロッパにも分布しているということです。
むかし、あるところに、子どものいないおじいさんとおばあさんがいました。子どもが欲しくて、神さまにお願いしていたところ、やがて、小指ほどの小さい子どもが生まれました。二人は大切に育てました。その子は賢い子でしたが、いつまでたっても大きくなりません。「一寸法師」と呼ばれるようになりました。
ある日のこと、一寸法師は、都にでて出世したいと思いました。それで、おじいさんとおばあさんにひまをもらい、針の刀を腰にさし、お椀(わん)の船、お箸の櫂(かい)で川をくだり、都へむかいました。都にたどりつくと、大臣の屋敷をたずね、家来にしてもらいました。小さくてかわいいので、お屋敷の人気者になりました。中でもお姫さまにとても気にいられました。
あるとき、お姫さまのお供をしていると、三匹の鬼に出会いました。自分たちを見てなにか話しています。これはただごとではないと思い、一寸法師は鬼のところへ走っていきました。小さいので鬼は少しも気がつきません。鬼は、お姫さまと一寸法師をさらってやろうと話していました。これを聞いて、一寸法師は、鬼の大きな目に次々と針の刀をつきとおしました。鬼は、これにはよわりました。目が見えなくてはどうすることもできません。逃げていってしまいました。
鬼が逃げたあとを見ると、打ちでの小づちが落ちていました。これは、欲しいものは何でもだせるという、鬼の宝物です。お姫さまは、一寸法師に何をだして欲しいかたずねました。一寸法師は「背(せい)」をだしてくださいとたのみました。お姫さまは、背でい、背でい、と小づちをふりました。すると、一寸法師の背がずんずんのびて、りっぱな男になりました。それで、一寸法師は、そのお姫さまのおむこさんになり、おじいさん、おばあさんを都へよんで幸せに暮らしました。
絵:諸戸美和子
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