(4) 残された課題
ただ、一生懸命発掘したんですが、実をいいますと、まだまだわからないことがございます。本来ですとこの内堀を渡って本丸に入ろうと思いますと、その当時ですと土橋がどこかにないといけないのですが、今のところ発掘でそれを見つけておりません。ですから本丸への入り口が今まだわからない状態です。今後まだ発掘する機会がありましたら、ぜひそれを確かめたいと思っています。それからもう一つは、先程も申しましたように、本丸の周囲の調査では建物の跡が十分に残っていませんので、
どういう建物があったのかという、よりいっそう詳しいことがわからずじまいで終わってしまった。これは非常に残念なことです。後もう一つは、ここにたくさん堀があって、これを有岡城の時代の堀だといっているんですが、どうも一つ変な堀がございます。この階段状になっている堀(図(2)第二三次SF〇一)なんですが、この堀が実は、内堀まで抜けてしまうんです。
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普通に考えるとおかしな話ですね。堀というのは、敵が外から攻めてきた時に、それを遮しゃ蔽へいするためにあります。内堀の下まで突き抜けてしまうと、底へ入られて登ってこられるんですね。向きがだいたいおかしいですね。有岡城の堀と違って、くいちになっている。一部どうも有岡城の堀を利用しているようなんですが、散々頭をひねったんですが、理解できません。そこで伊丹市の教育委員会の小長谷さんが、これは織田信長方が城を攻める時に攻撃用の堀としてつくったんではないか、ということをお考えです。私もそれに賛成したんですが、村重側の堀を結合させながら、なおかつ内堀の方へ入っていけるように堀を掘っている。要するに、自分の体を隠すいわゆる塹ざん壕ごうです。当時の記録を見ますと、「仕し寄より攻め」というのが出てきます。これは要するに、敵を攻める時に塹壕として掘る堀です。一六一四年に行われました大坂冬の陣を描いた屏風があります。この中に、それに類するものが出てまいります。大坂城側を攻めている徳川方の軍が、堀の傍までずっと塹壕を掘っている絵が出てくるんですが、どうもそれのような気がします。ただこれは、証明するのがなかなか難しいので、まだ確実にそうだとはいい切れないですけれども。そのような疑問点がまだまだ残っています。
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二 城下町のようす
いまお話しましたのは、主郭とそれからその周辺の発掘成果です。この辺りでは、侍町でした。それから、第一図では真ん中には街道が通っております。多田街道という道です。有馬道ともいいます。この道の少し東側に大溝筋というものが描いてあります。どうもこれによって、城下町の町屋の方と、侍町の方を分けて、城内を区分して、西側は一般の商工業者が住むいわゆる城下町にしていったようです。しかもただ城下町にしているだけではなくて、その所々に砦を築いてます。一番北の端の猪名野神社、これは岸砦と呼ばれたもので、それから今はもうありませんが、墨染寺の北側に女じょ郎ろう塚砦というのがあったようです。これは今の伊丹第一ホテルの辺りになりますが、その伊丹第一ホテルの下で見つかっております。それと埴輪が見つかっています。埴輪というのは古墳に立てられるものですから、この辺りには古墳があって、古墳を利用して砦をつくっていたんではないかというふうに考えられます。
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堀といえば、伊丹第一ホテルの北東の、今の郵便局の下にも、斜めに延びる堀が見つかっております。あの辺り一帯が女郎塚砦というものであったようです。南の端には、いま現在も残っておりますが、鵯ひよどり塚砦があります。これも周りを伊丹市教育委員会が発掘して、古墳を利用した砦であるということがわかっております。この城郭と城下町をぐるっと取り囲んで土塁が巡らされています。図(1)の絵図にはそれに当たる所に竹が植えてあったり、松が植えてあったりしています。この土塁の外側には、現在は用水路になっておりますが、かつては堀が巡らされていました。こういう城と城下町とを一体として取り囲んで、土塁、堀を巡らす構造を、われわれは「惣構え」というふうに呼んでいます。
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そういう構造のお城であったということが、発掘から随分わかってきました。この城で非常に特徴的なのは、いま申しました「惣構え」構造であること。それから、城下町と侍町が大溝筋というもので、はっきりと分けられていることが非常に大きな特徴として挙げられます。こういうお城を誰が造ったかということについては、文献ではポルトガルの宣教師のルイス・フロイスが、天正五年(一五七七)にこのお城にやってまいりまして、荒木村重に私の立派なお城を見てほしいと言われたんだけれども、残念ながら朝早くに発たないといけなかったので、見られなかったというふうな記録が残っております。おそらくはこの荒木村重によって、このように造られたんだろうということがわかります。ざっと有岡城の構造のお話をいたしました。
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