第八章 近世の伊丹の姿
〜発掘でみる有岡城〜
川口 宏海

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   二、発掘の手順
    1 遺構の検出
 続いてスライドを見ていただいて、具体的な発掘の様子を、感じていただけたらと思います。最初は発掘の手順の説明を少しおり込みたかったものですから、それに関するスライドを入れています。皆さんの中には、発掘の現地説明会というふうなものに参加されて白線がいっぱい引いてある、穴ぼこがいっぱいある、という所はご覧になった方が結構いらっしゃるかと思いますけれど、どうしてあんなふうに、穴ぼこがいっぱいあるのがわかるのかと、よく質問を受けます。

 今ここにありますのは(写真6)、まだ何も手をつけてない状態の地面です。今この道具で、地面を非常に綺麗にしたところなんです。実はここに、柱の穴が見えているんです。何となく真ん中辺りが黒っぽいというのは、わかりますよね。この周りに黄色い土がずっとありまして、ここだけ黒っぽく汚れている。われわれの仕事というのは、こういう土の色を見分けていくのが一つの仕事で、綺麗にしていきますとそこに穴ぼこの後が見つかるわけです。これを見分けられないと、仕事になりません。ちょっと年季がいるのと、コツがいります。やっているうちに、だんだんとわかるようになります。

 次に、輪郭だけ書いてあるものを見ていただきます(写真7)。これがちょうど、輪郭を入れているところでして、よく見ますと、線が入るとよくわかるかと思いますが、これは実は二重になっているんです。これが、印が終わった状態のものです(写真8)。二重になっているのは、どういうことかと言いますと、掘っ立て柱という形式の柱だからです。地面に穴を掘りまして、そこに柱を立てるんです。その後、周りを埋める。ですから、実際の柱はこの真ん中に立つんです。真ん中の円が、柱の穴のいわゆる木の大きさそのものなんです。最初に大きめの穴を掘りまして、真ん中に柱を据えつけまして、柱の辺りを埋めて固めて柱を立てるんです。非常に原始的な縄文時代の竪穴住居から、延々と続く建物の建て方、柱の建て方です。どうしてこんなふうに色が変わるのかということについては、もともとは黄色い土が、本来の自然の土色ですね。これを一旦掘り返しますと、周りの草などが一緒に入るんです。柱を埋めて、周りを掘り上げた土でまた埋めてしまいます。すると、ついさっき掘った土なんですけれども、草などが入って少し汚れてしまうんです。

 ただ色は非常によく似ています。柱は長い間経ちますと腐って、建物が倒れてしまう。そうすると、木のあった部分はまた違う土の色になるんです。中心の柱があったところが、土に置き変わってしまうんですけれども、木のあった分だけ黒さが濃いという形になるんです。こんなふうに、掘っ立て柱というのは、柱と柱を埋めた土と、そして周りの土という、二重の形で検出されます。これを掘るわけなんですが、一番最初に柱の大きさを知るために、先に真ん中の穴の方から掘るんです。写真(9)はいま柱穴を掘っているところです。周りは柱を立てるときに埋めた土の分を少しだけ下げて、わかるようにしてあります。発掘というのは、こういう形で土の色を見分けて穴ぼこを見つけていくんだ、というふうに思っていただけたら結構かと思います。

    2 写真測量
 もう一つだけ、写真(10)は平面の写真測量をしているところです。こういうアドバルーンを上げまして、この下にカメラが付いています。このカメラをリモートコントロールで、下から操作して、上空から地面の遺構の写真を撮るんです。今は非常に便利になっていまして、写真をずらして撮ると、そこから地面の高低差がわかります。今は非常に機械化が進んでおりまして、こういう航空写真測量を使って図面を作っていきます。皆さんがよくお使いの二万分の一だとか、五万分の一の地形図も、こういう形で作られています。五万分の一の地図などは、飛行機を使いますが、われわれは面積が小さいのでこのアドバルーンを使うのです。ちなみに、これをしたちょうどその時に、非常に強い突風が吹きまして、思わぬアクシデントが起こりました。何かと言いますと、このアドバルーンの綱が切れまして、ゆらゆらと飛んでいったんです。滅多にそんなことはないのですが、測量会社の人が真っ青になって追いかけました。どこまで行ったかと言いますと、川を隔てた一番広い所、すなわち伊丹空港です。大目玉を食らいました。たまたま飛行機が飛んでいない時だったのでよかったのですが、飛行機が飛んでると、下手すると事故になります。測量会社の人が、二度とやりませんと謝りました。実はこれが新聞に載ってしまいまして、たいへん恥ずかしい思い出がございます。


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