[總目次| 前頁| 次頁]
凌雲帳水の巻
運點前 爐 凌雲帳 水の巻-上

○第三章 炭點前 第六節 炭點前中の變つた所作



○炭點前中の變つた所作

gif

 一、
大香合の扱ひ方

之は炭斗へ入れ難き大形であるから、灰器と共に持出すのである。灰器は普通に右手で持ち、左手で香合を握り出て定つた位置へつき、灰器を前へ置き、香合は右手で灰器と膝との中央へ置き、灰器を定位へ置いて後、右手で香合を取り、左掌へのせて爐へ向き直り、右手で定位へ置く。

持込むときは此反對で、灰器を先に前へ置き、香合を右手で取り、左へ持替へ、灰器を右手で取つて持込む。

但し香合が客方へ出してあるときは、此手數なし。

gif

女子は灰器と別々で、香合を左掌へのせて、右手を添へて持出し、本勝手及び臺目では、香合を置く位置へ斜に坐し、其他の勝手では、中央へ坐して置附けて、更に灰器を持出す。

本勝手及び臺目では、香合の大さにより、左圖の如く羽を置くも差支へなし。

 二、
釣釜の扱ひ方(小間は自在、廣間は鎖[くさり]を用ふ)

 釣釜(つりがま)の時は、炭斗より羽・火箸・香合を出し、續いて釜敷を出す。釜の蓋をなし、左手で鉉(つる)の中央を下より上へ向けて支へ、右手で小猿(こざる)を握り指にて先を緩(ゆる)め、左手で鍵を靜かに突き上げ、釜を少しく上へあげる。

 鎖(くさり)なれば、右手で鍵を三つ上へあげる。

 右手で鉉(つる)の右肩(かた)を握り、左手を左の鐶へかけ、其まゝ釜をあげ、手を放さずに膝を向け位置を直し、定位迄引き、左を先へ右を後に鐶より鉉を放し、兩手で釜の下座へ置き、鐶をはずして其股(また)へ置く。

 鐶の附着してゐる釜は、鐶を釜の肩へもたせかけて置く。

 爐へ向き直り、左手で鍵を下より支へ、右手で以前と同じく小猿(こざる)を握り、指にて緩め、左手で鍵を充分に押し上げ置く。

 鎖なれば、左手で下より支へ、右手で更に三つあげる。

 炭を終りて釜を懸ける時は、

 先づ左手で下より鍵を支へ、小猿を先の通りに緩めて、少しく鍵を下し置き

 鎖なれば同樣にして三つ下げる。

 膝を定位へ向け、釜へ鐶をかけ兩手で鉉を取り、左を先に鐶へかけ、初めの通り右手で鉉の肩、左手で鐶を握り釜を引き、爐へ向き直り釜を懸け、左手で下より支へ、右手で緩めて釜を下げ、適當の位置へ留む。

 鎖なれば、三つ下げて初めの位置となす。

 以上の扱ひ方は、何れの勝手でも同樣である。但し中柱ある席では釣釜をなさず。

gif

 三、
透木釜の扱ひ方

釜を掲げ普通に定位へ引よせ、更に爐へ向き、右手で右側の透木(すきぎ)を取り左掌へのせ、次いで左側の透木を取り、先の透木(すきぎ)の上に重ね、釜を引いた時の位置迄向いて右手で鐶の下座へ並べ置く。

懸ける時は、先づ置く時と同じ位置迄向いて右手で透木を取り、左掌へのせて爐へ向き直り、右手で左側を先へ、右側を後に透木を置き、次いで普通の所作に移る。

以上何勝手でも同樣である。

 四、
後の炭

後の炭とは二度目の炭で、茶會の節の濃茶後の炭點前を言ふ。別に定つた後の炭と言ふ所作もなく、又必ずしも變つた所作を必要とはせぬが、たゞ目先の變るやう、炭の入れ方を工夫し、或は所作を變へなどする。

胴炭のくづれある時、普通の胴炭を用ふるも、勿論差支へはないが、輪胴(わどう)は胴炭の代りに、此處で用ふるものである。

強ひて變つた所作を言へば、後の炭點前に限り、炭を入れる前に香を入れる事がある。則ち灰を撒き終り、羽にて掃き、香合を取り香を入れ、香合は元の位置へ置く。

炭の入れやうも、先の模様と違つて入れ、且つ枝炭は三枝の方を入れる。

之は後の炭に、普通の事である。

香合は、最後に炭斗へ入れる。則ち羽にて釜の蓋を掃き、羽を炭斗へのせて後、右手で香合を取り、左手であしらひ炭斗へ入れる。

若し初炭とは別の香合で、正客より一覽を乞はれた時は、此時炭斗へ入れる代りに客の方へ出す。出し方普通。

gif

 五、
香合を灰器へ入れて持出す事

これ亦後の炭又は薄茶に限る事で、大切な香合を用ふる時には、なさぬ業である。

灰の匙の部分だけ平になし、匙を上向けて入れ、其上へ香合をのせ、灰器を持出す時に持出す。

灰器を持出し普通の通り斜に坐し、灰器を前へ置く。

右手で香合を取り、左手であしらひ灰器と膝との間へ置き、灰匙を取つて灰を普通の形に直し、灰器を定位へ置き、香合を左掌へのせ、爐へ向いて後、香合を定位へ置く。

終りには、香合を炭斗へ入れて持込む。

一覽の所望あれば、常の通り客方へ出す。

gif

 六、
胴炭を灰器へ入れて持出す事

これ亦後の炭に限る所作にて、釜を掲げて爐中の胴炭が、既にくづれあるを發見したる時は、爐中へ灰を撒き、羽にて掃きたる後、右手で灰器を取り、水屋へ入り、匙を上向けとなし、その上へ上圖の如く胴炭をのせ、一方は灰器のふちにもたせかけ、右手で持出で爐前へ坐し、左手であしらひ、灰器を灰を撒く時の位置へ置く。

右手で胴炭を爐中へ入れ、灰器中の灰を直し匙をふせ、灰器を炭斗の横、普通定つた位置へ置く。

 七、
後の炭の時、初炭の如く胴炭を炭斗に入れ持出せる時、之は前者と反對に釜を掲げて、爐中の胴炭が、未だ殘りあるを見た時は、普通の點前にて胴炭を爐中へ入れる時に爐中へは入れず、右手で灰器へ入れ置く。其形は甲乙何れにてもよし。

gif gif

甲は灰を撒き終れば、匙を上向けに入れて置き、炭の一方を匙へのせ、一方を灰器の縁にもたせ置く。

乙は兩端を灰器の縁へのせ、左右は灰器の縁と、匙の柄とにて止める。

向切の時は、枝炭を灰器の左側へのせ置く。

炭を入れ終り、火箸を左に構へ、胴炭を炭斗へ返し、殘りの枝炭を炭斗へ返す。

甲の時は、灰器を最初の座へ直す時、一旦側へ置き灰を直し、匙を普通に入れ直すべし。

 八、
釜へ水をさす所作

名物釜を用ひた時、又は名水を用ひた時は、必ず客前にて釜へ水を差すと言ふ人あるも、當流にてはかゝる定法なし。唯だ風爐の節、朝茶の會では、初炭に釜へ水を指す定つた所作があるのみ。之の外は主人の随意で、釜の湯が少ないと思へば、水を差し置くを可とす。無論後の炭點前に限る所作である。

gif

藥鑵の蓋へ、茶巾をたゝんで圖の如くのせ、口へ丈の蓋置をさし、口を釜の方へ向けて持出すべし。從つて本勝手臺目、向切等の場合は、左手で持ち、右手を口の下に添へて持出し、隅爐逆勝手の場合は、この反對に持つ、此時は茶巾の載せ方も亦反對の側となる。

又取合せの都合で、木地の小片口を用ふる事もある。之を用ふる時は、蓋置は手に握り込んで、その手を口の下に添へて持出す。

釜へ水を差す時は、釜の蓋を拂ふ要なき故爐縁を掃いて後羽は爐邊へ置かず。直ちに炭斗へ載せる。

水を差す所作左の如し。

gif

本勝手

炭手前を終り「ニ」へ向いて釜を「ホ」迄引いて、斜になさず其まゝ鐶をはづして左へ置き、灰器を持つて立つて勝手へ入り、藥鑵を持出し「ヲ」へ坐し、藥鑵を左側へ置く。

勝手口は、開けたまゝ締めず。

右手で蓋置を横より取り、左手であしらひ、右手で蓋置を上より持ち、鐶の前へ置き、釜の蓋を取り蓋置へ置く。

女子なれば、茶巾で釜の蓋を取り續いて藥鑵を取る。

右手で茶巾を取り、左手で藥鑵を掲げ、茶巾を口の下へあてゝ、水を適宜に差し、藥鑵を元へ置き、茶巾を元通りのせる。

藥鑵の口に蓋あれば、茶巾を取つたとき直ちに茶巾で口をあけ、又藥鑵を置いた時蓋をする。

釜の蓋をなし、其手(右の手)で蓋置を取つた時と反對に扱つて、藥鑵の口へさし、右手で茶巾をとり、上面を下にして、釜の蓋を「リ」の字形に拭き、更に釜の肩を「リ」の字に拭き、茶巾を中へ二つに折り、前肩を一文字に拭いて茶巾を元通りにして藥鑵へのせる。

女子は、先と同じく茶巾にて蓋をなし、摘(つま)みをはづして蓋上へ置き、蓋置を藥鑵の口へさして後茶巾を取つて蓋上等を拭く。

藥鑵を持込み「ニ」へ坐し、鐶をかけ右を引いて釜を斜になし置き、爐へ向き直りて釜をかける。


gif

臺目

炭點前を終り、釜を引く時は「ヲ」へ向く。

藥鑵を持込み、出て「ニ」へ坐して鐶を釜へかけ、右を引いて斜になす。

其他本勝手と變りなし。

gif

向切

炭點前を終り、「ニ」へ向いて釜を引きよせ上圖の如く眞直ぐになし置く。

藥鑵を持出した時、客へなるべく背を向けぬやう、斜に「ニ」へ坐す。藥鑵を持込み再び出て「ニ」へ坐し、鐶をかけて右を引いて斜になす。其他本勝手と同じ。

gif

隅爐

「ニ」へ向いて釜を引きよせ、下圖の如く眞直ぐになし置く。藥鑵は右手で持出し、右側へ置き、蓋置は左手で取る。

藥鑵持込み、更に出て「ニ」へ坐し、鐶をかけ左を引いて斜になし置き爐へ向き直る。

其他變りなし。

逆勝手

隅爐と變りなし。只藥鑵を持出す時、客へ背を向けぬやう注意して斜に「ニ」へ坐す。

 九、
釜の拝見

當流にては爲さぬ事であるが、若し他流の人が客であつて、一覽を乞はれた時は、水をさす時と同じやうになし置き、向き直りて灰器を持込み置き、勝手口外に坐して、拝見を終るを待ち出て水をさした時と同じ所作にて、釜をかけるべし。


[總目次| 前頁| 次頁]

FujiyamaNET は「山は富士、酒は白雪」でおなじみの
小西酒造株式会社が運営しております。

FujiyamaNETに関するご意見・お問合せ:fujiyama@konishi.co.jp
Copyright(c) 1996-2009 konishi Brewing co.,Ltd.