酒盃台展座談会 酒盃台と日本酒
はじめに
熊野 「今回の「酒盃台展」は、市制60周年記念ということで、伊丹市と伊丹クラフト協会の主催になっておりますが、清酒発祥の地・伊丹にちなんだ「酒盃台展」というヒントをくださった小西酒造さまが創業450周年ということもあり、ぜひともと共催をお願いして、実現できた公募展であることを申し上げておきたいと思います。私個人としましては、審査員としていままでにないおもしろい先生方のお顔が拝見できるということを楽しみにしておりまして、そのことを小西社長に申し上げますと、ぜひお話を聞かせていただければということで、このような席をもたせていただきました。社長からごあいさついただいて、歓談に入らせていただきたいと思います」 小西 「酒盃台展開催にあたってのご説明をさせていただいて、それをごあいさつにかえさせていただきます。まず、伊丹市制60周年および小西酒造創業450周年ということですが、小西が450年つづけさせていただけたいちばんのポイントは、地元の方にささえられてきたということだと思います。私自身の考え方としては、歴史伝統とは、なにかに根ざしていないといけないんじゃないかと思っておりまして、私どもの場合はこの土地に根ざして来たということです。そういう感謝の気持ちも含めまして、なんらかの形で伊丹市になにかさせていただけないだろうかと、熊野所長に相談いたしましたところ、「酒盃台展」を、ということになりました。伊丹市工芸センター、伊丹クラフト協会の考え方である、産業との接点を求める具体例としてであり、1600年代から全国的に「酒造りのまち」として栄えてきた伊丹の歴史にもとづいた展開としても考えております。また、伊丹の商家が引き継いできた「隠れたスポンサーシップ」の掘り起こしでもあります。私が両親から聞いた話に「やっかい長屋」というのがありました。これは、「厄介者」のやっかいじゃなくて「御厄介になる」のやっかいで、文武に優れたかたに投宿していただいて、その教えを乞うという形の「やっかい長屋」があったということを聞いておりまして、それこそがスポンサーシップの考え方じゃないかと思うわけです。小西酒造の考え方としましては、不易流行の革新経営をめざすということがあります。埋もれたよいものを掘り起こす、ということが、今回の「酒盃台」にもつながります。お酒の場合には、級数制度というものがございまして、特級、一級、二級というのがあったわけですが、それが、平成元年に」一部なくなり、4年に完全になくなった時に、今後小西酒造としましては、お酒を飲みかわす場面 、シーンを前以上に大切にしていきたい都考えて、「座・コミュニケーション」という6つの「座」それぞれの場面 を想定して新製品を開発していこうという考えです。お酒文化の掘り起こしをして、楽しいお酒の飲み方を提案していこうと思っております。また、これは私自身最近感じたことですが、現在の食卓に日本酒が合っていないんじゃないかということがあります。それは、テーブルの高さにもっとも表われているように感じます。酒盃台も含めた、新しいテーブルウェアの提案をしていくことも必要だと考えます。この2月に酒蔵に入りまして、私自身の手でお酒造りをいたしました。小西酒造といえば大手と我々の業界ではいわれているんですが、私自身の原点というのは規模の大小ではないんじゃないかと。お酒造りに対する心意気、思い入れがどれだけあるかということがお酒のすべてではないかと。そういうことで、ただ現在はどうしても商品になってしまうと右から左へ売れるという形ですね。そういうものも、すべて原点に帰ってこういうお酒の造り方をさせていただいたわけです。そういうお酒を飲みながら、酒談義といいますか、こういう飲み方をしたら楽しいんじゃないかとか、集まっていただいた皆さま方には、いろんなお酒の飲み方などをお教えいただきたいなと、思っておるわけです」
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酒盃台
鯉江 「乾杯しましょう」 一同 「乾杯」 小西 「私の酒盃台のイメージというのは、盃が載っているものとばかり思っていたのですが、さきほど熊野所長からお伺いしたところでは、酒盃台とは必ずしもそうではないと。なるほど、そのほうが逆におもしろいと」 熊野 「酒杯を載せた作品を出してきた人が多いんですが、あえて募集要項には、そういうことは書かなかったんです。つくる人の解釈でよろしいということで、私どもはその届いた作品をどう判断するかなんですけど、今回は酒器は意識的にはずしていただいて、酒盃台に限るということで考えていただければいいかなと。次回はもう少し間口を広げて、酒杯が載った形のものも受け付けますということで」 隠崎 「酒盃台には、こぼれた酒を溜めるような役割があるんでしょうか?」 熊野 「そうですね」 小西 「酒飲みの心理として、こぼれるぐらい注いでほしいというのがありますよね。お茶を山盛りに注いだら失礼になってしまうのに、お酒だと溢れるような注ぎ方が好まれますよね」 鯉江 「升酒がそうですね。なみなみと、溢れるまで注ぎますね」 隠崎 「そういう工夫をした作品はあまりないですね」 熊野 「全体にまじめになってしまった。今回選んでいただくことで、次回遊びが出てくるとありがたいとおもうんですが」 淺原 「基本的に、今回は受け取る側が初めて聞いた名前だという人が多かったと思うので、酒盃台というものがまず何なのかという、定義がわかれへんと。だからどんなものを出してきてもかまわないと。本人の受け取りかただと。で、もっと奇想天外なのがあると思ったが、みんな調べてきてるねんね。全く調べてへんで出してきてる人は、ぐい飲みとかいう形なんやね、たぶん」 高山 「今日は、率直に、先生に酒盃台のイメージをお聞きしたいですね。最初に知っておられたのか、知らなかったのかも」 鯉江 「僕はまったく初耳に近かったんですよ。だけど、自分の生活のなかでは使っているんですね」 高山 「自分なりのね」 鯉江 「それが、韓国の餅を切るまな板でね。でかいんですよ。厚くてね。かっこいいんですよ、スケールが大きくて」 高山 「なるほど、それが先生の酒盃台ですね」 鯉江 「韓国で買ってきたんだけど、韓国でマッカリなんか飲む時はみんなで胡座かいて、大きなボウルで、マッカリが来るわけでしょ」 高山 「トントンチュウですね」 鯉江 「あれがいいんだよね。ひとつの座だね」 小西 「酒を酌み交わすという意味の座ですね」 鯉江 「これらの作品もいいんですけど。もうちょっとわいわいという感じで」 高山 「現代の酒盃台があってもいいわけですな。ガラス工芸の立場からはどうですか?」 淺原 「酒盃台というのは、僕も何人もの人に聞かれてね、酒盃台って何ですかって。熊野君に聞いてたように、自分のとらまえかたでつくりなさいと言ったんですけども。僕自身も分かれへんかったから。僕の聞いた限りでは、酒盃台なるものの定義はないみたいですね。で、もっと奇抜なものがあるのかなという気はしてたけど、わりとオーソドックスなきれいな形が多かったから、逆に、酒盃台とはこういうものやったんかと、僕のとらまえ方間違ってんのかなと(笑)。 1回目の審査っていうのは重要ですから、次回のためにもみんなで酒盃台についていろいろ話し合えたらいいなと思っています。お料理を載せた、いわゆるトレイみたいな考え方とかも出てくるとは思うんですけど、そのへんが自由にいろいろあるほうがおもしろい。盃洗と一緒にしたようなものとか」 鯉江 「盃洗ねえ。昔はうちにもあったね」 小西 「資料によると、昔は盃洗にも使ったと書いてありました。さきほど溢れたものを溜めておけるようなのがあってもおもしろいんじゃないかというお話もありましたが」 淺原「総体的にお皿ですよね、溢れたものを集めるというのは。升もお皿に載ってくるし、線の入ったテイスティング用の酒器もお皿に載せたり」 小西 「機能的にいったらね、テーブルを汚さないようにという。お酒っていうのは、ドロッとしてるでしょ。それと、お酒の匂いがつくとか。そういうとこあるんじゃないかなあ」 熊野 「他の飲み物と違って、酒っていうのに関してだけは執着心が強いように感じません?」 高山 「それと、飲酒文化っていうか、楽しむっていう要素なんですな」 伊藤 「僕がいちばん初めに思い浮かんだのが、東南アジアの竹で編んだ丸い台なんです。漆かなんか塗ってあるのかな。あれでお酒飲んだらおいしいかもしれない。それと、爺さま曾爺さまあたりが使ってた漆塗りのいわゆるお盆ですよね、脚のついた。でも、酒盃台なんて広辞苑調べてみてものっていないし、困ったな、審査員引き受けちゃったしと思って。どんなのが出てくるんだろうと、さっき拝見したら、製作意図っていうのが強く出過ぎている作品が多くて、気になりました。お茶の世界の「見立て」みたいな。もっと気軽に、そこいらへんに落っこってる鉄の缶 の錆びたのを見立てちゃおうみたいな、そんな楽しみみたいなのがあってもいいんじゃないかという気はしましたね」 熊野 「僕は、作品は最初からガラスよりは木漆関係が多いだろうと踏んでたんですけど、ガラスの先生をおふたりもお願いしたのは、酒盃台に関してのガラス的なものの挑戦があってほしいという願望があったんです」 淺原 「これは、他のクラフト展のときもそうだと思うんですが、ガラスって言ってしまったら、全部ガラスでつくってしまわなければならないととらまえてしまうところがおかしいと思うんですよ。90%他の素材であっても、10%のガラスが生かされている素晴らしさがあるものであれば、僕はガラスの作品やと思うんですけどね。酒盃台展ということであれば、素材の混ざりあったもっともっと楽しい作品が出てきてもいいような気がするンです」 鯉江 「近年、圧倒的に日本酒は、冷やで飲むんですね。そうすると、それにマッチしたガラス的な作品が増えてもおもしろいですよ」 熊野 「それに、長もちしなければならないというのもナンセンスで、コストの高い安いにかかわらず、潰していくぐらいの勢いがあってもいいんじゃないかと」 淺原
「酒盃台に限らず、日本酒のパッケージングということでいえば、パッケージの素材で、なかに入るお酒をいかに楽しめるかということも考えますね。僕ら、ガラス屋やし、やっぱりガラスに入れて見てみたいと思いつく。お酒に、色を楽しめるものが出てくれば、ボトルももっと違ったものが出てくるだろうし。量 だって、一升瓶にこだわらず、720mlあたりのワインとか洋酒の量ですよね。そういう違った方向性が考えられるのかなという気はしますけどね。今回の酒盃台展がきっかけになったらいいんですが」
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酒の飲み方
淺原 「僕は、基本的にお酒は好きなんですけど、お料理もまた好きなんですよ。だから、食べるものによって、よりおいしく食べれるものがビールであったり、ワインであったり、ウィスキーであったりしたいなと、いつも思っているんですよ」 小西 「ワインのソムリエの方は、料理とワインをバッティングさせて新しいものをつくる、味わいの新しさを求めるのが彼らの力だと、いつもいわれるわけです。我々、日本酒メーカーとしては、バッティングではないと。いま先生が言っていただいたように、料理を引き立たせるためにお酒があるんだという飲み方を、我々はやはりしていただきたい。もちろん個性の強いお酒もありますので、バッティングする場合もあるかもしれませんが、基本はやはりその料理を引き立たせるという。刺身とか、ちょっと臭みのあるお魚とお酒がどれだけ合うかということです。やっぱりワインとは違うと。そのような楽しみ方をしていただけたらなと思います。いまの若い人はワインワイン、と言う。基本的に食べ方も違いますし、飲み方も違う。そういう部分では我々のアイデンティティをしっかり持ちたいなと思っています」 淺原 「その通りやと思います。僕は日夜闘いつづけていると言ってもいいぐらい、毎日お酒と顔を合わせているのですが、どんな料理とどのお酒が合うか、ご自分でいろいろテイストされたらいいと思うんですよ。これがこれでないといけないということは決してないと思ってますから。ただ、お豆腐をちょうだいするときは、僕はビールよりか日本酒が欲しいと思ってしまう。ワインでいえば、生ハムをちょうだいするときにはやっぱり濃厚なものが合うような気がするし、お刺身ならドライなものが。とすると、お酒でも、おのずと似たようなものがね。ただ、日本酒の場合は、お料理に結構使いますよね。日本の料理はもちろん、僕は西洋料理にだってお酒を使ったりするんですね。だから、日本酒っていうのは、本来は何にでも合うものだと思ってるんです。ただ、ほんとに甘いものはちょっとどうかなという気はしますが。話はそれますが、スルメは韓国にもありますが、何にでも、ワインにでもビールにでもお酒にでも合います。あぶったのと、そのままのと、これまた合うお酒の種類が違う。もう、万能やね。キムチに和えてもおいしいですねー」 伊藤 「それにしても、どうして最近はこんなに冷やのブームなんですか?」 小西 「昔、お燗のお酒っていうのがあって、いま、お燗の酒の見直しっていうのをやってるんですけど、マーケティング的に発想すると、やはり、冷やの酒っていうのは飲みやすく口当たりがいいですので、入門編的な形では冷やなり、冷やした冷酒が合うと。また香りを重視するお酒については、基本的にお燗をすると香りがとんでしまうということもあるわけですね。でも、本当のお酒の旨味を感じるには、お燗のお酒を大切にしたいと。でも、最初からお燗というと、あの匂い、プーンとするのがいやだとか言われる若い方が非常に多いんですね。基本的に最初は冷やか、そのままでお飲みいただいて、それでだんだんお酒をお好きになってきたら、お燗のお酒の楽しみ方をおぼえていただくという、そういう勧め方をするとまたお燗のお酒も変わってくるんじゃないかと。でも、いまご指摘のように、どちらかというと、お燗のお酒というのは敬遠されてしまうと。でも、お燗はお燗の味わいがあるわけですし」 伊藤 「呑み屋に行ったり、ホテルのバーなんかでもそうですけど、『お燗してね』って言うと『熱燗ですか』って言われるんですよ。『熱燗でなくて、人肌でいいんだけど』って言うと、『熱燗ですね』って念を押されてケンカになるんですよ(笑)。僕、若い頃に爺さまからお酒っていうのは次の料理を食べるために口のなかを洗いながら楽しむもんなんだよって言われて育ったもんですから、なにか冷や酒ってのは、抵抗があって。あの香りが無理矢理ワインと対抗してるような気がして、そんなバカなことするなよって思うんですけど」 熊野 「お燗の場合、中に入ってるお酒と徳利の温度が全然違うんです。徳利の形状とか厚みによっても全然違うんですね」 鯉江 「できないんでしょ、このごろ。また、お燗をするプロセスを楽しんでないでしょ」 熊野 「そうです。燗をする人の慣れっていうのは、すごく要求されますね」 小西 「いまはないですけど、昔は料亭に行ったらお燗番いうのがありましたね」 伊藤 「本当は、人肌のお酒で、ちょこっとした料理をいい器でっていうのは、たぶん世界でもいちばんかっこいいくらいの生活だと思うんですけど。そこが軽薄にワインにいってしまうみたいなのは。もちろんワインもおいしいですけどね」 熊野 「ワインが軽薄なんじゃなくて、若い人が形だけでワインに入っていくという部分を言われてるんでしょう」 伊藤 「本当においしいワインの味なんか知りもしないのにっていう。たぶん、日本人はシャンペンだとドンペリニヨンがいちばんだと思ってるかもしれませんけど、それよりはるかにおいしいシャンペンはあるし、ドンペリニヨンなんてフランス人に言わせりゃ、アメリカ人と日本人の観光客しか飲まないお酒なんですよ。だから日本酒のかっこよさって、外国人にわかんなくったっていいですよ」 小西 「うれしいご発言、ありがとうございます」 伊藤 「これもうちの家族がどっかでちっぽけな造り酒屋をやっているという、ちょっとした誇りみたいなものをどっかで引きずっているせいでしょう」 鯉江 「僕も飲むのは燗の酒なんですよ。燗の酒っていうのは、さしつさされつという感じで。やっぱり冷や酒っていうのは、なんか孤独な、ひとりだけで楽しむという感じがするんですよ。『場』ができにくいわけですよ」
酒と文化
鯉江 「昔は、飲んで悪さしましたよ。いまの若い子がワルイっていうけどね、僕らもっとワルイことしてたんとちゃうかな。僕らの頃は知能が低かったと思う(笑)」 伊藤 「いまのヤツは賢い」 鯉江 「そう、賢いと思う」 熊野 「いじめるといっても、いまみたいないじめ方はなかったですよ」 鯉江 「日本には、先輩後輩とかいうのがなくなっちゃった。昔は、先輩に『飲め』って言われたら、絶対飲まないかんかった」 淺原 「高知に残ってる。高知の連中と飲んだら潰れるまで飲まされる。酒屋さんにとってはうれしいよね。どんどんはけるんやから」 小西 「地域のほうが地酒の消費量が多いですよね。そういう意味では酒屋が存続しやすいっていうか。都市部のほうがそういう傾向は薄いですね、ファッション性で日本酒を飲んでしまってるから」 鯉江 「韓国もそうですよ」 熊野 「楽しいですね。韓国の飲み方は」 鯉江 「韓国の田舎では、マッカリとかトントンチュウとか、酒屋には売ってないんです。あそこのばあさんとこなら、いまちょうどいい具合だとか、聞いてきて」 熊野「手づくりですね」 鯉江 「やかん持って買いに行くんだ。これがうまいんだよね。韓国の飲み方はおもしろい。ケンカはよくありますよ。でも次の日にはカラっとしてるね。そういう意味ではドライなんだよ」 淺原 「感情あらわやからやね。酒は陰気に飲んだらいかんね。楽しく飲まんと。最近の若いヤツは飲まない。飲み方を知らんというより、酒自体を飲まない」 高山 「量も飲まない?」 鯉江 「飲めないのかねえ」 熊野 「飲まないですね」 隠崎 「僕はあまり飲まないです」 熊野 「隠崎さんとは、昔ご一緒させてもらったときに、僕も甘党なもので、ふたりでまんじゅうばっかり食べていたことがありましたね。『僕たちは高級ブランデー飲みながらまんじゅう食べるんや』とか言ってね」 小西 「自殺者が日本全国で3万人超えたというのも、酒コミュニケーションというか、飲みコミュニケーションというものが、だんだんなくなってきて、みんなどこでストレスを発散させていいか分からなくなってしまっているんじゃないですか」 熊野 「若い人が飲まないっていうのは、飲み方を知らないっていうと怒られるかもしれないけど、憂さ晴らしをしようとしないんですね。それを酒にだけ求める必要はないんですけども、それがないんです。そうかといって、全然飲まないわけじゃなく、バーとか、カッコつけたところでは飲んでるみたいですよ。昔のように憂さ晴らしする飲み方はされないんですね。それが、自殺者が増えているってことにすぐならないにしても、少しはあるかもしれないですね」 淺原 「いまは、大学で先生が学生を連れて飲みに行くということがないんですか。それともついて来ないんですか?」 熊野 「いえ、そうではなくて、例えば、合宿に酒をいっぱい持っていっても、飲めないんです、飲まないんです」 淺原 「飲まないんですか」 熊野 「飲み切れてない」 鯉江 「先輩が飲めっていうこともない?」 熊野 「それと、学校自体が敬遠気味ということもありますけど」 鯉江 「要するに、埒内。埒の内にはまってるんだ。文化っていうのは埒外に育つもの、不埒なものなんですよ。その中にある以上は絶対に先に行けないです。どっかズレてね、初めて次の新しい世界が見えてくるわけで。いまは乏しいよね、なんか」 熊野 「もっと安い酒があるといいんですけどね。韓国は安い酒があるんですね、トントンチュウとか、安いでしょ。1升瓶が1000円ちょっとぐらいです。みんなでわいわい飲める安い酒がある。日本ではビールにしても安いことはないですからね、酔えて安いっていうのが」 淺原 「僕らは職人さんと「ほんなおし」っていうの飲んでましたもん、味醂の焼酎割りみたいなもんですよね。関東にはないでしょう。関東では『ほっぴ』がありますよね。『ほっぴ』は関西にはないですよ」 熊野 「職人さんはよく飲みますね。」 淺原 「飲まないとコミュニケーションでけへんというところもあってね」 熊野 「石屋さん、陶器屋さん、ガラスの人もそうですね。火をさわったはる人いうのは強いですね」 淺原 「職人さんは休憩時間ごとに飲みますもん。僕も、それに対する憧れがあってね、飲んだからといってガラスがうまくなるわけではないんだけど、ロッカーにお酒を置いて、お昼休みに飲んだりしてましたけどね」 高山 「気付けですか」 淺原 「そんなもんです」 熊野 「発散するのがいいですね。沖縄で日中ビール飲んでもスコーンと抜ける感じしますもんね」 淺原 「ガラスやっててもすぐ抜けるよね。溜まるということはないと思いますよ。たぶん火を扱っているところは抜けが早いんでしょう。酒盃台に話を戻すと、集まった作品を見ると上品なお酒ばかり飲んでいらっしゃるひとが多いようですね。みんな優等生!」
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