嵯峨縁起

嵯峨天皇、檀林皇后
●嵯峨天皇、檀林皇后
製作年度:1971年
サイズ:160mm

 この頃も、相変わらず人形は売れなかった。

 売れても1万円か2万円ぐらいだから、およそ、創作人形が職業とはいえない。
 作家として自分の職業になるのは、いつのことだろう。
 もしかしたら、なれないかもしれない。
 そんなことを考えていたから、創作人形を作って生活をする事になにかしら迷いがあった。人形制作そのものに、大きな壁を感じ、作っても作っても自分に迷いがあるから気に入らない、出来かけの首や、手足がごろごろしていた。

 この頃、私は不思議な人に出会っている。
 私の作品から、ちゃんとその迷いを見抜いていたのである。
 能面師と名乗るその人から、人の形には自然の掟があることを学んだのである。
 その人の教えを耳をそばだてて、私は雷にでもうたれたかのように、聞きおどろき、それまでの長い間、ただ何も考えないで作っていた自分に気がついたのです。
 その時を境に、失敗作のごろごろが、まったくないのです。

 名前も住所も教えてくれなかったそのひとは、別れ際に、人と人の出会いは自分でつくるのではない、ちゃんと、用意されているのだ。と話された。私はまだ、教わりたいことがいっぱいあるのだが、それは私の欲なのかもしれない。


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